鳥束零太は「斉木楠雄のΨ難」に登場する重要なキャラクターで、寺の息子として生まれた霊能力者です。彼の外見的特徴として、学校でも私服の作務衣を着ている時も、常にバンダナと数珠のネックレスを身につけています。この独特なファッションは、彼の霊能力者としてのアイデンティティを表現しています。
鳥束の能力は主に二つあります。一つ目は「霊視」で、幽霊を見ることができる能力です。一般的な霊能力者が幽霊をぼんやりとした恐ろしい姿で見るのに対し、鳥束のレベルでは普通の人間と同じくらいはっきりとした姿が見え、会話もできます。これにより幽霊から情報を得たり、説得して成仏させたりすることができます。
二つ目の能力は「口寄せ」で、呼び寄せた幽霊を自分の体に憑りつかせて、その幽霊の生前の特技を使用することができます。さらに作品終盤では「悪魔憑き」という新能力も発現させ、楠雄の肉体に憑りつくという驚異的な力を見せました。
性格面では、斉木曰く「澄んだ目をしたクズ」と評されるほど、煩悩の塊で自分の欲望に対して非常に正直です。特に女性に対する興味が強く、「やましい事に…使うッス!」という台詞が彼の本質を表しています。しかし、幽霊を蔑ろに扱うことには強く反発するなど、独自の信念も持ち合わせています。
鳥束零太と斉木楠雄の関係性は、作品の中でも特徴的な展開を見せます。鳥束は斉木の隣のクラスに転校してきた際、すでに斉木が超能力者であることを知っていました。彼は斉木に対して強い興味を持ち、「心の中を覗かれてると思うとちょっとやですね」と言いながらも、あえて接触を試みています。
初対面の時点では、鳥束は斉木の能力に対して憧れや尊敬の念を抱いていたことが窺えます。一部のファン創作では、鳥束が長年斉木の噂を聞いて憧れていたという解釈もあり、初めて会った時の緊張感はそうした背景からくるものかもしれません。
物語が進むにつれ、二人の関係は複雑に変化します。特に作品終盤では、斉木の兄である空助によって鳥束は洗脳され、斉木と敵対することになります。しかし、完全に斉木を憎むことができなかった鳥束は、最終的に空助から制御装置を奪い、斉木に渡すことで彼を助けます。
最終話では、斉木によって地球を襲う大災害に対して身代わりとして作戦に参加するなど、二人の信頼関係が確立されていることが分かります。また、三年に上がって初めて同じクラスになった後も、超能力を失った斉木を助けるなど、「なんやかんやで仲の良さ」が描写されています。
この関係性は、敵対と協力、理解と誤解が入り混じった複雑なものであり、作品の魅力の一つとなっています。
鳥束零太の声を担当しているのは、人気声優の花江夏樹さんです。花江さんは「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎役でも知られていますが、この二つのキャラクターは性格が正反対であり、その演技力の幅広さが高く評価されています。
「斉木楠雄のΨ難」の作者である麻生周一先生も、自身のTwitterで花江さんの演技を称賛しています。麻生先生は鳥束零太が炭治郎の羽織を着用したイラストを投稿し、「竈門炭治郎と真逆の生き物。何度観ても同じ声優が演じてるって忘れちゃう( ´ ▽ ` )凄い!」とコメントしています。
鳥束零太の声演技では、「やましい事に…使うッス!」といった下心丸出しのセリフや、澄んだ目で語る不真面目な発言など、キャラクターの二面性を見事に表現しています。特に、斉木楠雄との掛け合いシーンでは、鳥束の軽薄さと時折見せる真剣な表情の切り替えが絶妙です。
アニメ「斉木楠雄のΨ難」完結編では、鳥束零太は重要な役割を担っており、メインビジュアルにも斉木楠雄の兄・空助とともに描かれています。花江さんの演技によって、鳥束零太というキャラクターの魅力が一層引き立てられていると言えるでしょう。
鳥束零太にとって、幽霊は特別な存在です。幼少期から幽霊と付き合ってきた彼にとって、幽霊は「普通に存在していて、ごく当たり前の人間と変わらない存在」なのです。そのため、幽霊が蔑ろに扱われることに対しては強く反発します。
彼のプロフィール欄には、初恋の相手が「幽霊のミヨちゃん」と記載されているほど、幽霊との関係は深いものがあります。また、口寄せの能力を会得するまでは「幽霊は全員いい奴」だと思っていたという記述からも、彼と幽霊の関係が決して劣悪なものではなかったことが窺えます。
作中では、学校の音楽室に出る女の子の霊を説得して成仏させた後、その子の未練であったグランドピアノを引き取るというエピソードがあります。また、肝試しのために廃ビルに行った際には、悪霊を放っておけないとして、悪霊の心を開くために説得を行うなど、幽霊に対する彼なりの責任感や思いやりが描かれています。
さらに、燃堂力の亡くなった父親が鳥束の守護霊となっているという設定もあり、彼の周りには常に幽霊が存在しています。こうした幽霊との交流は、鳥束のキャラクター性を形作る重要な要素となっています。
鳥束零太は「斉木楠雄のΨ難」の中でも人気キャラクターの一人であり、多くのファンアートやファン創作が生まれています。特にpixivやテラーノベルなどの創作サイトでは、鳥束零太を主人公とした小説や、斉木楠雄との関係性に焦点を当てた作品が多数投稿されています。
ファン創作の中には、鳥束と斉木の関係性を恋愛的に発展させた「鳥斉」というカップリング作品も見られます。例えば、「なんとか噴火から地球を救い、なんだかんだあって結婚した鳥束霊太と(旧姓)斉木楠雄」という設定の小説や、「生徒鳥束と斉木先生」という設定の作品など、様々な解釈でキャラクターが描かれています。
また、公式でも麻生周一先生が鳥束零太のイラストを自身のTwitterに投稿しており、「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎の羽織を着用した鳥束のイラストが話題になりました。このイラストでは、ポーズを決めた鳥束が「オレの活躍を全集中して観てくれっスよ!」と言っており、それに対して「擦り寄るな黒歴史」というツッコミが入れられています。
こうしたファン創作やイラストは、鳥束零太というキャラクターの魅力を様々な角度から引き出し、作品の世界観をより豊かにしています。公式とファンの相互作用によって、キャラクターの人気が維持され、作品終了後も愛され続けているのです。
鳥束零太は、その独特な性格と能力、そして斉木楠雄との複雑な関係性によって、多くのファンの心を掴んでいます。彼の「澄んだ目をしたクズ」という矛盾した魅力は、「斉木楠雄のΨ難」という作品の中でも特筆すべき存在となっています。
「斉木楠雄のΨ難」は2018年に完結編が放送され、その後も多くのファンに愛され続けています。鳥束零太というキャラクターを通して、この作品の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。