「魔法少女特殊戦あすか」の世界では、21世紀に人類が他の知的生命体と接触を果たしますが、その出会いは決して幸福なものではありませんでした。地冥界(ディスアス)から侵攻してきた化け物たちは、人類の現用兵器の多くを無効化し、人類は滅亡の危機に瀕します。
しかし、同じく地冥界に苦しめられていた精霊環境条約機構の助けにより、人類は「魔法少女」という起死回生の切り札を手に入れます。強大な魔力を持つ少女たちは、心身に多くの傷を負いながらも人類を勝利へと導き、ついに「ディストニア戦争」と呼ばれる大戦を終結させました。
この戦争から3年後、世界中に散らばった魔法少女や魔法兵器は人間界に新たな軍事バランスをもたらし、世界を救った「伝説の五人(マジカル・ファイブ)」もそれぞれの生活を送っています。しかし、国際犯罪、無差別テロ、内戦、紛争など、魔法少女たちの戦いは終わることがありませんでした。
作品の特徴として、従来の魔法少女作品にはない「魔法少女×ミリタリー×アクション」という新しい組み合わせがあり、リアルな戦争描写と魔法少女という要素が融合した独特の世界観が展開されています。
本作の主人公である大鳥居あすか(CV:洲崎綾)は、「伝説の五人(マジカル・ファイブ)」のリーダーでした。しかし、ディストニア戦争での過酷な体験から大きなトラウマを抱え、PTSDに苦しみながら引退状態で日常を送っていました。
彼女は魔法少女となったことがきっかけで、ディスアスの勢力に両親を殺されるという悲劇を経験しています。基本的には冷静で状況判断に優れる一方で、精神面の弱さを持ち、戦闘中にそれが表れることがあります。「中学生で、一生分戦った」という彼女のセリフは、その心の傷の深さを物語っています。
あすかは物語の始まりでは高校に転校してきた生徒として日常を送っていましたが、友人が目の前でテロリストの襲撃に巻き込まれたことをきっかけに、再び魔法少女として戦うことを決意します。現在は陸上自衛隊特殊作戦群魔法少女特殊戦開発部隊(通称M班)に所属しながら高校生活を送っています。
「伝説の五人」のメンバーには、あすかの他に夢源くるみ(CV:関根明良)やミア・サイラス(CV:松井恵理子)などがいます。彼女たちもそれぞれの国の軍隊に所属するなど、戦後の新たな軍事バランスの中で生きています。
「魔法少女特殊戦あすか」の大きな特徴の一つが、リアルで緻密な戦闘シーンと武器設定です。本作では、魔法少女たちがそれぞれ特徴的な武器を使用して戦います。
主人公のあすかは「マジカル・カランビット」と呼ばれる変身アイテム兼武器を使用します。これを巨大化させて高速回転させることで、相手を切り裂く大技「ラプチャー・タロン」を放つことができます。この武器はあすかの戦闘スタイルを象徴するもので、近接戦闘における彼女の強さを表しています。
本作の戦闘シーンは非常にグロテスクな描写も含まれており、ほんわかした従来の魔法少女作品とは一線を画すゴリゴリのSF戦争モノに仕上がっています。アクション作画監督の神谷智大氏や銃器デザインを担当した氏家嘉宏氏らの協力により、リアルな戦闘描写が実現されました。
また、本作では魔法少女だけでなく、テロ組織「バベル旅団」のメンバーなど、敵キャラクターも独自の魔法や武器を使用します。例えば、アビゲイルという敵キャラクターは近接戦闘が得意で、ハロウィン級冥獣を使用するなど、魔法少女たちを苦しめる存在として描かれています。
「魔法少女特殊戦あすか」が他の魔法少女作品と大きく異なる点の一つが、戦争によるトラウマやPTSDの描写です。主人公のあすかは、ディストニア戦争での経験から深い心の傷を負っており、日常生活を送りながらもその傷に苦しんでいます。
物語の中で、あすかは友人たちとプールに遊びに行くなど、一見普通の高校生活を送ろうとしますが、戦争の記憶は彼女から離れることはありません。「中学生で、一生分戦った」というセリフからも、若くして過酷な戦いを経験した彼女の心情が伝わってきます。
また、本作では他のキャラクターも戦争やテロの被害によるトラウマを抱えています。例えば、あすかの友人である牧野希美は、テロ組織「バベル旅団」のメンバー・アビゲイルによって「魔法少女なんてみたくもない」と言うほどのトラウマを植え付けられています。
このように、本作は魔法少女という華やかな設定の裏側に、戦争や暴力がもたらす心の傷という重いテーマを描いており、従来の魔法少女作品にはない深みを持っています。監督の山本秀世氏は、リアルなアクション描写だけでなく、キャラクターの丁寧な心情描写にも定評があり、それが本作の魅力の一つとなっています。
「魔法少女特殊戦あすか」のTVアニメは2019年1月から3月まで放送され、全12話で構成されています。第1話から第12話まで、あすかたち魔法少女の戦いと成長が描かれました。
特に第3話「もっとひどい戦争」では、あすかが友人たちとプールに遊びに行くという日常シーンから始まり、魔法少女としての戦いの日々から遠ざかり、穏やかな日常に浸るあすかの姿が描かれています。しかし、その平穏は長くは続かず、再び戦いの渦中に巻き込まれていくことになります。
また、本作では本編以外にも特番が放送されました。2019年2月10日には、洲崎綾さん(大鳥居あすか/ラプチャー☆あすか役)、関根明良さん(夢源くるみ/ウォーナース☆くるみ役)、松井恵理子さん(ミア・サイラス/ジャストコーズ☆ミア役)が出演する特番「魔法少女特殊戦あすか特番魔法少女たちのバレンタイン」が放送されました。この特番では、作中に出てくる冥獣をお菓子で作って、食べて討伐するという企画が行われました。
本作は2019年1月11日からMBSとTBSで毎週金曜日26:25から、CBCでは1月17日から毎週木曜日26:35から、BS-TBSでは1月12日から毎週土曜日25:30から、AT-Xでは1月13日から毎週日曜日22:30から放送されました。また、Amazon Prime Videoでは放送に先駆けて国内独占配信も行われました。
本作のオープニングテーマは「KODO」(nonoc)、エンディングテーマは「REBEL FLAG」(GARNiDELiA)が使用されました。
「魔法少女特殊戦あすか」は、魔法少女というジャンルに新たな風を吹き込んだ作品として、アニメファンの間で話題となりました。従来の魔法少女作品にはない重厚な世界観と、リアルな戦闘描写、キャラクターの心理描写の深さが評価され、独自の魅力を持つ作品として記憶されています。
アニメ放送から数年が経った現在でも、その独特の世界観とキャラクターたちの魅力は多くのファンの心に残り続けています。原作漫画は2021年2月に完結していますが、アニメでは描かれなかった物語の続きや、より深く掘り下げられたキャラクターの心情など、原作ならではの魅力も存在します。
魔法少女とミリタリーという一見相反する要素を融合させた本作は、魔法少女ジャンルの新たな可能性を示した作品として、アニメ史に残る一作と言えるでしょう。PTSDに苦しむ主人公の姿や、戦争がもたらす心の傷という重いテーマを扱いながらも、魔法少女たちの強さと成長を描いた本作は、従来の魔法少女像を覆す作品として今後も語り継がれていくことでしょう。