クガ・ヒロトがGBN(ガンプラバトル・ネクサスオンライン)に初めて足を踏み入れたのは、GPデュエルからの移行期でした。当時、小型機体の可能性を模索していたヒロトは、コアガンダムを組み上げたものの、GPDとの操作感覚の違いに戸惑っていました。そんな時、イヴと名乗る少女ダイバーが声をかけてきたのです。
イヴの助言によって機体調整を完了させたヒロトは、後に「彼女がいなければ初日にGBNを離れていたかもしれない」と語っています。この出会いが、ヒロトのGBNでの活動の原点となりました。
ヒロトとイヴが共に過ごした期間は、推定で2年間以上と考えられています。この間、二人はミッションに挑戦したり、換装用アーマーに名前をつけたりと、かけがえのない時間を過ごしました。しかし、その関係は悲劇的な結末を迎えることになります。
イヴは自ら消滅することを選び、ヒロトはそれを止めることができませんでした。目の前で消え行くイヴに何もできなかったという強い喪失感は、ヒロトの心に深い傷を残します。この出来事がきっかけで、ヒロトはAVALONを脱退し、GBNから一時的に姿を消すことになりました。
イヴとの別れから立ち直れないまま、ヒロトは再びGBNに戻ってきました。しかし、かつての情熱を失い、寡黙な傭兵ダイバーとして活動を始めます。彼の目的はただ一つ、どこかにいるかもしれないイヴを探すことでした。
傭兵ダイバーとしてのヒロトは、他のダイバーやフォースに雇われて活動していましたが、通常の報酬には興味を示しませんでした。彼が求めたのは「ミッション中のフィールドを自由に探索させてもらう」権利だけでした。この独特な契約条件は、イヴを探し続けるという彼の強い意志の表れでした。
実力面での評価は高かったものの、無断で味方を利用したり切り捨てたりする戦術を多用することから、人格面での評価は低いものでした。この時期のヒロトは、他者との絆よりも目的達成を優先する冷徹な一面を見せていました。
幼馴染のムカイ・ヒナタは、イヴとの別れを境にヒロトの笑顔を見なくなったと語っています。かつてガンプラ作りに情熱を注いでいた少年は、心に深い傷を抱えたまま、孤独な旅を続けていたのです。
ヒロトの人生に転機が訪れたのは、カザミという男性ダイバーとの出会いでした。カザミは隠しミッションをプレイするためのメンバーを探しており、ヒロトを勧誘します。そして女性ダイバーのメイ、人狐の少年ダイバーのパルヴィーズとともに、フレディという犬のような姿をした少年の依頼を受けることになりました。
当初、ヒロトはこの新しいチームに対しても冷淡な態度を取り続けていました。彼の目的はあくまでもイヴを探すことであり、チームワークや仲間との絆には関心がありませんでした。しかし、フレディたち「山の民」の村を襲う「ヒトツメ」と呼ばれる敵との戦いを通じて、ヒロトは少しずつ変化していきます。
成り行きから「BUILD DiVERS」を名乗ることになったこのチームは、ミッションを重ねるごとに絆を深めていきました。ヒロトも次第に仲間を信頼し、協力することの大切さを再認識していきます。
特に重要だったのは、イヴから託された最後の願いを重ねたヒロトが、「大切に思えるものを二度と失わないため、誰かの為に頑張れる自分であることを選ぶ」という決断をしたことでした。この決断により、ヒロトは愛機をコアガンダムⅡへと改修し、新たな一歩を踏み出します。
ヒロトの過去には、もう一つの重要な出来事がありました。第二次有志連合戦において、ヒロトは上級者フォース・AVALONの一員として参加し、相手方の大将だったミカミ・リクの駆るダブルオースカイを捕捉し、撃墜可能な状況まで追い込んでいました。
しかし、自ら消滅することを選んだイヴに手を貸すことしかできなかった自身と、イヴが「妹」と呼んだ存在(サラ)を救うために戦うビルドダイバーズの姿に激しい葛藤を抱えたヒロトは、寸前で狙いを逸らしたものの引き金を引いてしまいます。この行為が彼の心に更なる傷を残し、AVALONを脱退する一因となりました。
BUILD DiVERSの活動が本格化し、アルスとの決戦に備えるため、メイの後見人であるマギーは「ロータスチャレンジ Ver.エルドラ」という超難関リハーサルミッションを企画します。このミッションには、ヒロトの古巣であるAVALONをはじめ、リク率いる本家「ビルドダイバーズ」も参加していました。
40回目の挑戦でようやくミッションを達成したBUILD DiVERSは、その後の親睦会でヒロトとリクが初めて対面する機会を得ます。この場で二人は互いに抱えていた罪の意識と葛藤を打ち明け合い、和解することができました。
リクとの激闘を通じて、ヒロトはかつて失ってしまった「ガンプラを楽しむ気持ち」を取り戻していきます。そして同じガンプラを愛する者として、互いに再戦を誓い合うのでした。
『ビルドダイバーズ バトローグ』では、ヒロトがガンダムバルバトスルプスレクスを駆り、クジョウ・キョウヤの操るストライクフリーダムガンダムと死闘を繰り広げるシーンが描かれています。
興味深いことに、バルバトスの本編でのパイロットである三日月・オーガスとヒロトの雰囲気が似ているためか、ヒロトがバルバトスルプスレクスを操る姿は違和感なく、見事に馴染んでいたと評されています。
さらに、ヒロトはガンダムシリーズの続編主人公であるヨナ・バシュタやシン・アスカと同様に「ヒロインと死別している」という哀しい運命を背負っています。この共通点は、ヒロトのキャラクター設定に深みを与える要素となっています。
バトローグでのキョウヤとの戦いでは、機体の相性的にヒロトが若干有利だったものの、キョウヤとの技量差は大きく、苦戦を強いられます。しかし、キョウヤからの「戻ってこいと言いたいところだが…お前には、もう無二の仲間がいる」という言葉に奮起し、「AVALONのヒロト」ではなく「BUILD_DiVERSのヒロト」として立ち向かっていきました。
この戦いの結末は明かされていませんが、少なくともヒロトはこれからもBUILD_DiVERSの仲間たちと共に前を向いて進んでいくことが示唆されています。
バトローグでは、何故かコクピットのヒロトも殴られたような跡ができるという不思議な現象も描かれており、GBNの世界とリアルの境界が曖昧になっている様子が垣間見えます。これはガンダムビルドシリーズならではの演出であり、ヒロトの成長を物語る重要な場面となっています。
ヒロトの心の成長は、「もう、繰り返さない。失くしたんだ、大切なものを。だから、繰り返さない――この胸の痛みは、本物だから」という彼の言葉に集約されています。過去の喪失と向き合い、新たな絆を大切にする決意は、ヒロトの人間的な魅力を一層引き立てています。
ガンダムビルドダイバーズRe:RISEの公式サイト - 作品の詳細情報や設定資料が確認できます
クガ・ヒロトの成長物語は、喪失と再生、孤独から絆へという普遍的なテーマを描いています。イヴとの別れという深い傷を抱えながらも、新たな仲間との出会いを通じて少しずつ心を開いていく姿は、多くの視聴者の共感を呼びました。
特に印象的なのは、リクとの和解のシーンです。かつての敵対関係から友情へと変わる様子は、第24話でのキラ・ヤマトとシン・アスカの和解の場面を連想させるという声も多く、ガンダムシリーズの伝統を受け継ぐ感動的な瞬間となっています。
ヒロトの物語は、失ったものを取り戻すことの難しさと、新たな絆を築くことの大切さを教えてくれます。そして何より、ガンプラを通じて人と人とが繋がっていくという、ガンダムビルドシリーズの根幹となるメッセージを体現しているのです。