飛田展男さんの名を一躍有名にしたのは、1985年から1986年にかけて放送された『機動戦士Ζガンダム』のカミーユ・ビダン役でしょう。この役は飛田さんのキャリアにおいて最も重要な代表作の一つとなっています。
カミーユ・ビダンは、女性的な名前を持つことにコンプレックスを抱き、感情の起伏が激しい少年として描かれています。飛田さんはその繊細な心理描写と成長過程を見事に演じ切りました。特に「カミーユは男の名前だ!」という名セリフは、多くのファンの記憶に残る名場面となっています。
また、『機動武闘伝Gガンダム』ではウルベ・イシカワ役、『機動戦士Vガンダム』ではマチス・ワーカー役など、ガンダムシリーズの他作品でも重要な役柄を担当しています。富野由悠季監督との関係も深く、ガンダムシリーズにおける飛田さんの存在感は非常に大きいものがあります。
ファンからの評価も高く、アンケートでは「カミーユは飛田さんの声があってこそのキャラクター」「切れる少年カミーユの演技が素晴らしい」といった声が多く寄せられています。
飛田展男さんは長寿アニメでも印象的なキャラクターを多く演じています。中でも特に有名なのは、1990年から現在も放送中の『ちびまる子ちゃん』の丸尾末男役です。完璧主義で几帳面な性格の丸尾くんは、クラスの優等生として描かれており、その特徴的な話し方は飛田さんの演技によって確立されました。
また、『クッキングパパ』の田中一役や『星のカービィ』のコックカワサキ役など、長く愛されるアニメ作品でのレギュラーキャラクターも担当しています。特に『星のカービィ』では、コックカワサキだけでなく、多数のゲストキャラクターや端役も演じる一人多役ぶりを披露し、その演技の幅広さを証明しました。
さらに、『名探偵コナン』では風見裕也刑事役を務めています。興味深いことに、飛田さん自身が講演会で「コナンに出たくて作ってもらったキャラクター」と語ったという逸話もあります。長年にわたって同じキャラクターを演じ続けることで、キャラクターの成長や変化も表現し、視聴者に親しまれる存在となっています。
飛田展男さんはテレビアニメだけでなく、アニメ映画でも数多くの印象的な役柄を演じています。特に注目すべきは、スタジオジブリ作品『海がきこえる』の杜崎拓役です。この作品では主役級の役柄を担当し、専門の男性声優としてジブリ作品の主役を務めた数少ない声優の一人となりました。
杜崎拓は内向的でピアノを弾く少年として描かれており、飛田さんはその繊細な心情を丁寧に表現しています。この役柄は、飛田さんの少年役としての演技力が高く評価された代表例と言えるでしょう。
また、『劇場版 名探偵コナン』シリーズでは風見裕也刑事役として継続的に出演し、テレビシリーズと同様に人気を博しています。さらに、『薄桜鬼』シリーズの山南敬助役など、アニメ映画化された作品でも重要な役柄を担当しています。
アニメ映画での飛田さんの演技は、テレビシリーズとはまた異なる緊張感と密度を持ち、作品の世界観を深める重要な要素となっています。
飛田展男さんの声優としての最大の魅力は、その多彩なキャラクター演技にあります。少年から大人まで、真面目なキャラクターからコミカルなキャラクターまで、幅広い役柄を演じ分ける技術は特筆に値します。
『サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER』の004/アルベルト・ハインリヒ役では落ち着いた大人の男性を、『恋する天使アンジェリーク』の水の守護聖リュミエール役では優しく知的な人物を演じるなど、キャラクターに合わせた声色と演技で視聴者を魅了しています。
また、『GetBackers-奪還屋-』の赤屍蔵人役や『東京レイヴンズ』の蘆屋道満役など、クールでミステリアスなキャラクターも得意としています。さらに、『おそ松さん』のダヨーン役のようなコミカルなキャラクターも自在に演じ分けるその技術は、長年の経験に裏打ちされたものと言えるでしょう。
飛田さんの演技の特徴として、キャラクターの内面や感情の機微を繊細に表現する能力が挙げられます。特に感情の起伏が激しいキャラクターや、複雑な心理を持つキャラクターの演技に定評があります。
飛田展男さんは、その実力と経歴にもかかわらず、非常に謙虚で仕事を選ばない姿勢で知られています。ベテラン声優となった今でも、R-18作品などの「駆け出し声優がやるような仕事」も積極的に引き受けているそうです。
興味深いエピソードとして、富野由悠季監督との会話があります。富野監督が「それなりに大御所になったんだからもっと仕事を選んだらどうか?」と助言したのに対し、飛田さんは「好きでやってんですよ、ほっといてください」と返答したという逸話は業界内でも有名です。この姿勢は、声優としての飛田さんの真摯な仕事への取り組み方を象徴しています。
また、顔立ちや柔らかな物腰が、同学年である当時の皇太子徳仁親王殿下(現今上天皇陛下)に似ているとして、声優仲間から「皇太子」「殿下」などと呼ばれることもあったそうです。飛田さん自身もこのことをイベントなどでネタにしたこともあるという、ユーモアのセンスも持ち合わせています。
さらに、『星のカービィ』のアニメでは、レギュラーキャラクターのコックカワサキだけでなく、16もの役柄を一人で演じ分けるという驚異的な一人多役ぶりを披露しました。これは飛田さんの演技の幅広さと技術の高さを示す好例と言えるでしょう。
水谷優子さん(2016年逝去)とは『ガンダム』シリーズ、『ちびまる子ちゃん』、『少年アシベ』などで共演する機会が多く、特に『アシベ』での役柄での掛け合いは有名だったそうです。長年の共演を通じて培われた息の合った演技は、多くのファンに愛されました。
飛田さんの声優としての魅力は、その演技力だけでなく、仕事に対する真摯な姿勢や人間性にも表れています。40年以上にわたるキャリアの中で、常に新しい挑戦を続け、進化し続ける姿勢は、後進の声優たちにとっても大きな模範となっています。
声優という職業に対する飛田さんの考え方や姿勢は、インタビューなどでも垣間見ることができます。「キャラクターに命を吹き込む」という責任感と、「演じることの楽しさ」を常に大切にしている様子が伝わってきます。
飛田展男さんは、これからも多くのキャラクターに命を吹き込み、私たちを魅了し続けることでしょう。その豊かな表現力と真摯な姿勢は、日本のアニメ界にとって大きな財産となっています。
以上、飛田展男さんの代表キャラクターと、その魅力について紹介しました。彼の演じるキャラクターたちは、これからも私たちの心に残り続けることでしょう。